FIRE:1億円貯めたら嫌な仕事はしなくても良くなるのか?
FIRE(Financial Independence, Retire Early)って言葉を初めて聞いたのは2015年前後だったかな。「ミニマムな生活をして、30代前半までに100万ドル(1億円ほど)貯めたら、以降は運用益だけで生活可能なので、もう一生、嫌な仕事をしなくて済む」って聞いて、直感的に
・そんなこと可能なのかな?
って思った。ということで在宅勤務で時間があるので
・30代前半までに1億円を貯めることは可能か?
・1億円貯めたらその運用益で生活することは可能か?
を調べてみました。
■30代前半までに1億円を貯めることは可能か?
可能だった。条件はあるけど。
- 大学卒業したら、即、結婚して共働き
- 夫婦とも給料は手取り400万円でスタートし、毎年、25万円ずつ増える想定
- 生活費は年300万円
だと、以下の通り、35歳で1億円貯まります。
表1:生活費以外は全額貯蓄(金額の単位は万円)
年齢 |
夫手取 |
妻手取り |
貯蓄額 |
23 |
400 |
400 |
500 |
24 |
425 |
425 |
1,050 |
25 |
450 |
450 |
1,650 |
26 |
475 |
475 |
2,300 |
27 |
500 |
500 |
3,000 |
28 |
525 |
525 |
3,750 |
29 |
550 |
550 |
4,550 |
30 |
575 |
575 |
5,400 |
31 |
600 |
600 |
6,300 |
32 |
625 |
625 |
7,250 |
33 |
650 |
650 |
8,250 |
34 |
675 |
675 |
9,300 |
35 |
700 |
700 |
10,400 |
また、
4. 年利7%で運用
という条件を付けると表2のようになります。
表2:年利7%で運用(金額の単位は万円)
年齢 |
夫手取 |
妻手取 |
金融資産 |
23 |
400 |
400 |
500.00 |
24 |
425 |
425 |
1,085.00 |
25 |
450 |
450 |
1,760.95 |
26 |
475 |
475 |
2,534.22 |
27 |
500 |
500 |
3,411.61 |
28 |
525 |
525 |
4,400.42 |
29 |
550 |
550 |
5,508.45 |
30 |
575 |
575 |
6,744.05 |
31 |
600 |
600 |
8,116.13 |
32 |
625 |
625 |
9,634.26 |
33 |
650 |
650 |
11,308.66 |
33歳で1億円達成。
年300万円で夫婦二人が生活できるのか、っていうと。
- 家賃7万円/月だとすると年84万で残りが216万円
- 旅行などが年30万円とすると残りが186万円
- 月々の食費・水道光熱費・通信費その他が、186万円/12ヶ月=15.5万円/月
まぁ、贅沢しなければ不可能ではなさそうですね。
ちなみに、ネットの記事などで「収入の2割は貯蓄しましょう」といった意見をよく見ますが。
上記1、2の条件(1.大学を出たら、即、結婚。2.夫婦とも手取り400万円からスタートし毎年25万円増える)で収入の2割を貯蓄した場合、貯蓄額が1億円になるのは54歳です。ただし「手取りが毎年25万円増える」という条件があるため、54歳だと夫も妻も手取りが1,175万円となり、ちょっと現実的とは言えないですかね。「4.年利7%で運用」を加えると43歳で達成可能です。
■1億円貯めたらその運用益で生活することは可能か?
4%ルールっていうのがあって「1億円貯めたら、それを運用して毎年4%を引き出して生活する」ってことなんですが、この考え方の元になった論文
Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable : AAII Journal—February 1998, Philip L. Cooley, Carl M. Hubbard and Daniel T. Walz
では、1926〜1995年の期間で、株(S&P500)と債権(長期優良社債)を様々な比率で運用した場合、毎年、何%を引き出すことができるのか?を検証しています。
結果は「株の比率が50%以上(=債権の比率が50%以下)であれば、毎年4%を引き出しても95%以上の確率で30年間は生活可能」でした(1926〜1955の30年間、1927〜1956の30年間、1928〜1958の30年間、、、って1年ずつずらして検証したら95%以上で「資金が枯渇することが無かった」ということ)。
S&P500など株価に連動するインデックスファンドに50%以上・残りを優良な社債 or 国債で運用すれば、30年間は毎年4%を引出しても95%の確率で生き残れる、ってことですね。
* ちなみに、上記論文の検証によると、引出し比率を4%以上にした場合、30年未満で破綻する可能性が急激に上がります。また、債権の比率を50%以上に上げる(=株の比率を50%以下に下げる)と30年未満で破綻する可能性が緩やかに上昇します。
ということで、1億円貯めるまでにすでにミニマムな生活は身についてるでしょうから4%で生活するのは不可能ではなさそうですね。
ただし、上記論文は「60歳あたりでリタイアした後の残りの人生を、経済的に破綻することなく過ごすにはどうしたら良いのか?」という視点で検証されているので、「30代前半でリタイアし、50〜60年生活することは可能か?」ということは誰も分からない、というのが実態です。
■何がしたいんだっけ?
30代前半に1億円貯めたとして、残りの人生を夫婦二人で400万円/年で生活をするっていうのはちょっと侘しい気もしますね。「子供が生まれたらどうするの?」とか「不測の事態(災害や、かつて無い規模の経済危機や、病気・事故など)が発生して、その戦略が継続不可能になったらどうするの?」とかも気になるし。
FIREのそもそもは「100万ドル(1億円)貯めたら嫌な仕事はしなくても良くなる」ってことだったので、本来、達成したいのは「嫌な仕事をしない。死ぬまで経済破綻しない」ということでしょう。
1億円貯めたらいきなりピタッと全ての仕事を辞めて運用益だけで生活する、というのもどうなんだろ、って気もするし、もっと現実的な生き方がありそうです。それはまた別の機会にでも考えてみようと思います。
おわり。